星の橋梁
雨がしとしと降っている。
七夕の日って毎年のように
梅雨空が広がっているような気がする。
窓の外を見ながら、
僕は大好きだった先生が教えてくれた
フィンランドに伝わる七夕の物語を
思い出していた。
元々僕は、多くの人が幼少期に
1回は聞かされているであろう
織姫と彦星の物語が
あまり好きではなかった。
性格のねじ曲がっていた僕からしてみれば、「恋に盲目になり、遊び暮らした挙句ニートになってしまった愚かップル」
としか思えなかったのである。
そんな僕に先生はこう言った。
「フィンランドには別の七夕伝説があるよ。
大昔、仲の良い夫婦が暮らしてたけれど、
2人は死後、かけ離れた星になったんだ。
でも会いたくて毎日星屑を集めて、
1000年かけて星の橋を作ったんだよ。
だからフィンランドでは川じゃなくて
"あの世の光の橋"と言われているんだって。
無事にシリウスの星の所で会えたんだよ」
1000年かけて大切な相手に
会う為の橋を作る。
1日いくつ星屑を集めたらいいのだろう。
1年は365日だから…単純計算で…
「無理だ…」
天文学的数字に思わず
僕は声に出してしまう。
「え、急に何?どうしたの?」
カフェで向かいに座っている
大好きな人の声を合図に、
僕は無事に空想から現実へ帰ってきた。
「ううん、なんでもない。
天の川、自分でも作れるかなぁって思って。
正確には川じゃないんだけど…」
「全然何言ってるのかわからないけど、
出来ると思うよ。見守ってるから頑張って」
本気で相手にしてはいけないと
思っているのだろう。
気のない返事をしながら笑っていた。
そこに在る事が当たり前に
思えてしまう時もあるが、
やっぱり、1000年かけてもう一度
会いに行きたい僕の大好きな笑顔だ。
気の遠くなる作業だから、
手伝ってくれなくてもいい。
ずっと見てて。
待ち合わせはシリウスの星にしよう
#眠れない夜に
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