横顔に映りて消えし

どおん、どおん

という轟音に目が覚めた。

ほんの少し昼寝、のつもりが
すっかり眠り込んでいたようで、
明るかったはずの部屋は
濃紺のインク壺の中にいるように
すっかり暗くなっていた。

窓に近づくと、
少し遠くで花火が上がっていた。

「どうしたの…?」

隣で寝ていた君も目を覚ます。

「今日、花火大会だったみたい」

「え!ほんと?ここから見える?」

「うん、少し遠いけど」

僕たちは並んで花火を見た。

「やったー!今年初花火だね」

無邪気に笑う横顔に、
不規則な光が映っては消える。

この打ち上げ花火が終わっても、
ちりちりと僕の想いを焦がす火種。

なんでもない日、君と並んで
真夏の夜の空気を纏っている。

起きたあとのほうが、幸せな夢だ。























梔子文庫

Kuchinashi Bunko 小説に纏わるあれこれ、 ショートショートをメインとした個人サークルです。 ストーリーは「眠れない夜の小さな話」を テーマにして書いています。 その他、細々とWEBマガジンにて 記事を書かせて頂いたりしています。

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