ジェリージェリー
くらげになったような気分だった。
旅先の旅館で
少しも寝付けなくなってしまった僕は、
ふわりふわりと海中を漂うような感覚を感じながら
隣の君に声をかけてみる。
「寝た?」
まるで、修学旅行の夜のような質問だ。
「ううん、まだ」
残念ながら、お喋りは期待できそうにない
まもなく眠ってしまいそうな声が返ってきた。
結局、僕は夜明けまで
浅い眠りに揺蕩ってみたりしながら
海の中のような青い闇が満ちている部屋で
一人で起きていた。
楽しかった旅行がもうすぐ終わり、
それぞれの日常に戻るのだと思うと
この部屋の畳や掛け軸、テーブルが
途端によそよそしく感じる。
一緒にいたい、でも一緒にいたくない ー
時間が長いほど「またね」が寂しいから。
そんな物おもいが頭の中を占拠した。
寝ている君を起こさないように、
そっと手の甲で頬を撫でてみた。
水面に映る満月を
まるごと飲み込んでしまったような
きらきらした笑顔を思い出した。
この先も「またね」と言い合うたびに
大なり小なり胸が軋むだろう。
でも、その寂しさも含めて
僕の宝物のような時間なのだ。
「今日も楽しかったね」、
「歩き過ぎて疲れたね」
「あそこのお店美味しかったね」
「また行こうね」・・・
何気なく使っているけれど、
決して一人では言うことのない、「…ね」。
大切な大切な、僕の「ね」の行き先。
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