ボーイ・ミーツ・ガール
理由のないプレゼントというのは、
実は最も難易度が高いのではないだろうか。
ただでさえ気の利いた事ができない僕は、
ラッピングされた児童書を見ながら思った。
誕生日やクリスマスと違い、
タイミングが難しいし
相手にどうしてなんて聞かれたら、
特に理由らしいものなんてない。
きっかけは、昨日ふらりと立ち寄った
神保町のブックカフェでの出来事だ。
「あっ、懐かしいこれ。
子供の頃親に読んでもらった」
りゅうと少年が冒険に出る名作。
「りゅうの家族を助けるために
冒険に出る話なんだけどね、
途中で親が寝ちゃうから
気になって1人で続きを読んじゃって…」
本当に嬉しそうに思い出話をしていた。
その笑顔は、いつもと少し違っていて
この先もし、100年一緒に過ごしたとしても
僕には引き出すことのできない
「思い出だけがもたらす表情」だった。
こんな風には笑わせられないのだな、
という悔しさと
もう一度あの顔が見たいな、
という僕の自分勝手な気持ちだけで
この本を贈ろうと決めたのだった。
さてどうしよう。いつ渡そう。
帰り際?でもそこまでもったいぶるほど
ご大層なものじゃない。
そもそも、
「懐かしかったけど別に欲しいってほどじゃ」
なんてことになるかもしれないのだ。
ああ、もう。
僕はこんなにぐずぐずとしていただろうか。
でも、こんな事で悩んでは
また君を好きになっていく。
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